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肝硬変は幹細胞治療で改善する?再生医療に期待できる効果と限界

肝硬変は、肝臓に慢性的な炎症が続くことで肝臓が硬くなり、肝臓の働きが徐々に低下していく病気です。

進行した肝硬変に対しては、原因となる病気の治療や、腹水などの合併症に対する治療が行われます。
しかし、進行した肝硬変を正常な肝臓の状態まで回復させることは、現在の標準治療でも簡単ではありません。

そこで、新たな治療選択肢として研究されているのが、幹細胞を用いた再生医療です。
当院では肝硬変に対してカテーテルを用いて幹細胞治療を実施しております。

この記事では、肝硬変に対する標準的な治療と、幹細胞治療に期待されている効果、さらに静脈内投与と肝動脈内投与の違いについて解説します。

 

肝硬変とは

肝硬変は、肝臓に慢性的な炎症が続くことで線維化が進み、肝臓が硬く変化していく病気です。

肝臓には、体内の有害物質を処理する、栄養を蓄える、血液を固めるために必要なタンパク質をつくるなど、さまざまな役割があります。肝硬変が進行すると、こうした働きが低下し、全身に影響が現れます。

肝硬変の主な原因には、次のようなものがあります。

  • B型・C型肝炎ウイルス
  • 長期間の多量飲酒
  • 肥満や糖尿病などに関連する脂肪肝
  • 自己免疫性肝炎
  • 原発性胆汁性胆管炎などの胆汁うっ滞性疾患

一昔前まではC型肝炎が肝硬変の原因の1位でしたが、近年では治療の進歩により減少傾向にあります。
近年では、C型肝炎に代わり、アルコール性肝障害が肝硬変の原因の1位となりました。
また、肥満や糖尿病などの代謝異常に関連する脂肪肝も肝硬変の原因の一つとして増加傾向にあります。

 

肝硬変が進行すると起こる症状

肝硬変の初期には、はっきりとした症状がないことも少なくありません。
肝臓の働きが保たれている状態を「代償性肝硬変」といいます。

一方で、肝機能がさらに低下すると、次のような症状や合併症が現れることがあります。

  • 腹水:お腹に水がたまり、張りや息苦しさが起こる
  • 黄疸:皮膚や白目が黄色くなる
  • 肝性脳症:意識がもうろうとしたり、性格や行動に変化が現れたりする
  • 食道・胃静脈瘤:食道や胃に異常な血管ができ、破裂すると大量出血につながる
  • 肝がん:肝硬変を背景として発症することがある

腹水や黄疸、肝性脳症などが現れた状態を「非代償性肝硬変」と呼びます。
一般的に予後不良とされているものの、その経過は原因疾患、肝機能の重症度、合併症の有無などによって大きく異なります。

しかし、肝硬変の経過や予後は、原因疾患や重症度、合併症の有無によって大きく異なるため、実際の診療では、Child-Pugh分類やMELDスコアなどの肝機能の重症度を評価した上で医師が判断します。

日本消化器病学会「患者さんとご家族のための肝硬変ガイド」

 

肝硬変の標準的な治療

肝硬変の治療では、まず原因となっている病気への治療を行います。

例えば、B型・C型肝炎であれば抗ウイルス治療、アルコール性肝障害であれば禁酒になります。

適切に治療することで、肝硬変の進行を抑えられる可能性があり、比較的早期であれば、肝臓の線維化や肝機能が改善することもあります。

進行した非代償性肝硬変で、腹水や肝性脳症、食道・胃静脈瘤、肝臓がんなどが生じた場合は、それらに対して適切な薬物治療や内視鏡治療、カテーテル治療などが行われます。

根本的な治療としては、肝移植があります。
ただし、すべての患者さんが受けられるわけではなく、年齢や全身状態などを含めた適応の判断が必要です。

また、ドナーの確保、手術に伴う合併症、移植後の拒絶反応や感染症などの問題があり、長期にわたり免疫抑制薬を服用する必要もあります。

 

肝硬変に対する幹細胞治療

こうした背景から、肝硬変に対する新たな治療法として、幹細胞を用いた再生医療の研究が行われています。

研究されている方法の一つが、患者さん自身の脂肪組織や骨髄などから幹細胞を採取し、体外で培養して増やしたうえで体内へ戻す治療です。

肝硬変に対する幹細胞治療では、投与した幹細胞がそのまま大量の肝細胞に変化するというより、幹細胞から放出されるさまざまな物質が、

  • 肝臓の炎症を抑える
  • 線維化に関わる細胞の働きを調節する
  • 残っている肝細胞の修復や再生を助ける
  • 肝臓内の組織修復に適した環境を整える

といった作用をもたらすと考えられています。

これまでの臨床研究やメタ解析(複数の臨床試験をまとめた解析)では、幹細胞治療後にアルブミン値や総ビリルビン値、MELDスコアなどが改善したという報告があります。

一方で、研究によって対象となる患者さん、使用する細胞、投与量、投与経路や投与回数が異なり、結果のばらつきがあります。
肝硬変を治癒させる効果や、長期的に生存期間を延ばす効果を証明するには、今後質の高い臨床試験の実施が必要になります。

 

静脈内投与と肝動脈内投与の違い

国内で自由診療として行われている幹細胞治療では、腕の静脈から点滴投与する方法が多く用いられています。

静脈内投与は体への負担が比較的小さく、繰り返し行いやすいという利点があります。
一方、静脈から投与した幹細胞の一部は、最初に通過する肺の毛細血管に捕捉されることが知られています。
これを「肺初回通過効果」といいます。
そのため、静脈内投与では、投与した幹細胞のうち実際に肝臓まで到達する細胞が限られてしまいます。

これに対して肝動脈内投与では、カテーテルを用いて、肝臓を栄養する動脈から幹細胞を直接投与します。
肝臓の近くまで細胞を運ぶことで、より多くの幹細胞を肝臓へ届けることができます。

 

メタ解析では肝動脈内投与に有利なシグナル

これまでに報告された複数の臨床研究をまとめたメタ解析では、肝動脈内投与で比較的良好な結果が示されています。

2018年のプール解析では、静脈内投与を行った研究と比べて、肝動脈内投与を行った研究では、MELDスコア、アルブミン、総ビリルビン、ALTなどが、より多くの評価時点で改善していました。Zhaoら、2018年

また、24件のランダム化比較試験をまとめた2020年のメタ解析でも、肝動脈内投与群において、MELDスコア、総ビリルビン、アルブミン、血液凝固機能などの改善が報告されています。Zhouら、2020年

さらに、肝硬変に対する間葉系幹細胞治療の11件の臨床試験をまとめた2023年のメタ解析では、肝動脈内投与群でMELDスコアとアルブミン値の有意な改善が認められました。一方、静脈内投与群では、同じ項目について統計学的に明らかな改善は認められませんでした。Luら、2023年

これらの結果は、肝動脈内投与が静脈内投与より有効である可能性を示していると考えられます。

ただし、これらの多くは、動脈内投与と静脈内投与を同じ条件で直接比較した臨床試験ではありません。
別々の研究を解析した結果であり、細胞の種類、投与量、肝硬変の原因や重症度なども異なります。

したがって、現時点では「肝動脈内投与の方が静脈内投与より確実に有効である」とまでいえる確定的な根拠が不足しています。
繰り返しにはなりますが、その優位性を確認するには、今後さらに質の高い臨床試験が必要です。

 

当院で行う肝動脈内投与

当院では、より多くの幹細胞を肝臓へ届けることを目的として、カテーテルを用いた肝動脈内投与を行っています。

腕の動脈からカテーテルを挿入し、画像で血管を確認しながら、肝臓を栄養する動脈までカテーテルを進めて幹細胞を投与します。

カテーテルを用いた肝動脈への治療は、肝がんの治療などでも広く用いられている方法です。
当院では、カテーテル治療に習熟した医師が担当します。

治療時間は、患者さんの血管の状態などによって異なりますが、おおむね30分程度です。
その後、カテーテルを挿入した部分からの出血を防ぐため、2~4時間程度の圧迫止血と経過観察を行います。

当院では原則として腕の動脈からアプローチするため、止血中であってもベッド上で上体を起こして水分を摂取したり、必要に応じて移動したりすることが可能です。
治療後の安静による体への負担をできる限り抑え、患者さんの負担軽減に努めています。
 

幹細胞治療に期待できることと限界

現時点で期待されているのは、残っている肝臓の機能を支え、アルブミン値などの肝機能の指標や、腹水・倦怠感などの症状、生活の質の改善です。

幹細胞治療を行っても、確実に進行した肝硬変が正常な肝臓に戻るわけではなく、肝硬変の進行を確実に止めたり、寿命を延ばす効果については確立していないのが現状です。

一方、進行した肝硬変では、障害された肝臓の機能回復を目的とした治療選択肢が限られているのも現状です。
そのため、標準治療を継続したうえで、期待できる効果や、現在わかっている医学的根拠などについて十分に理解した上で、幹細胞治療を追加の選択肢として検討することが重要です。

 

治療に伴う主なリスク

幹細胞の投与やカテーテル治療に伴い、次のような副作用・合併症が起こる可能性があります。

  • 発熱、悪寒、倦怠感
  • 穿刺部からの出血や血腫
  • 血管損傷や血栓
  • 感染
  • 造影剤によるアレルギー
  • 造影剤による腎機能への影響
  • まれに重篤な出血や臓器障害

これらの合併症が起こる頻度は、患者さんの肝機能、血液凝固能、腎機能、血管の状態などによって異なります。

治療の適応は治療前に血液検査や画像検査を行い、肝機能や全身状態を確認したうえで、医師が適切に判断します。

 

まとめ

肝硬変に対する幹細胞治療は、特定の項目で改善が報告されている一方で、治療法が確立していないのが現状です。

肝動脈内投与については、静脈内投与よりも多くの幹細胞を肝臓へ届けられるという理論的な利点があります。
また、複数のメタ解析で、肝機能の改善に有利な可能性を示す報告もされています。

期待できる効果だけでなく、治療の限界やリスクについても理解したうえで検討することが重要です。

当院では、肝硬変に対する幹細胞治療を検討されている患者さんを対象に、オンラインでのご相談にも対応しています。
治療の適応や方法について詳しく知りたい方は、当院までお問い合わせください。
※「幹細胞治療」は自由診療です。

この記事の監修医師

蓮見 淳(Jun Hasumi, M.D.)
医療法人社団 ICVS Tokyo Clinic V2 院長

2016年 東京慈恵会医科大学卒業。東京慈恵会医科大学附属病院等で放射線科医として研鑽を積み、2025年1月に当院院長に就任。

【専門医資格】
・日本医学放射線学会認定 放射線診断専門医
・日本IVR学会認定 IVR専門医

 

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